目次
  1. 1. LCCO₂の意味
  2. 2. 算定する5つの段階
  3. 3. エンボディドカーボンとオペレーショナルカーボン
  4. 4. 制度で何が求められるか
  5. 5. 算定の進め方
  6. 6. まとめ

LCCO₂(エルシーシーオーツー)は、建物の一生を通じて出るCO₂等の量のことです。2026年7月に建築物省エネ法が改正され、一定規模以上の建物では、LCCO₂の評価結果を国に届け出る制度が始まります。

この記事では、LCCO₂の意味と算定する範囲、制度で何が求められるか、算定の進め方を整理します。

要点

  • LCCO₂=建物の一生分のCO₂等の排出量:資材の製造・施工から、使用、修繕・更新、解体までを合計する
  • 建てるときの排出も数える:省エネで減らせる「使うときの排出」だけでなく、資材や工事の排出(エンボディドカーボン)が対象になる
  • 2028年度にかけて制度が始まる:改正建築物省エネ法により、5,000㎡以上の事務所などは着工前の届出が義務になる。建築士には、建築主への説明などの協力が求められる

1. LCCO₂の意味

国の資料では、ライフサイクルカーボン(LCCO₂)を、建物の資材製造・施工から解体に至るまでのライフサイクル全体を通じたCO₂等の排出量と定めています。

ポイントは「CO₂等」です。CO₂だけでなく、メタンなど他の温室効果ガスも、CO₂に換算して合算します。

これまで建物の脱炭素といえば、断熱や高効率設備で使うときのエネルギーを減らすことが中心でした。LCCO₂は、それに加えて、建てるとき・直すとき・壊すときの排出も含めて、建物全体を一つの数字で見る考え方です。

2. 算定する5つの段階

LCCO₂は、建物の一生を5つの段階に分けて算定します。建築GX・DX推進事業でも、この5つに分けて算定できるツールを使うことが条件になっています。

LCCO₂を算定する5つの段階と、エンボディドカーボン・オペレーショナルカーボンの関係
LCCO₂を算定する5つの段階と、エンボディドカーボン・オペレーショナルカーボンの関係
段階中身主なデータ
資材製造建材・設備の原料調達から製造までの排出資材の種類と数量、CO₂原単位
施工資材の輸送、現場での工事に伴う排出輸送距離、建設機械の燃料など
使用(資材関連)修繕・更新で取り替える資材の排出更新周期、更新する資材の数量
使用(光熱水関連)冷暖房・照明・給湯などのエネルギー消費に伴う排出省エネ計算の結果など
解体解体工事と廃棄物の処理に伴う排出解体する資材の数量

「CO₂原単位」とは、資材1単位(1トン、1㎥など)あたりのCO₂等の排出量のことです。数量×原単位で各資材の排出量を出し、それを積み上げるのが算定の基本です。

3. エンボディドカーボンとオペレーショナルカーボン

5つの段階は、大きく2つに分けて呼ばれます。

呼び方含む段階減らし方の例
エンボディドカーボン資材製造、施工、使用(資材関連)、解体低炭素な資材の選択、躯体の再利用、長寿命化
└ うちアップフロントカーボン資材製造、施工竣工までに確定するので、設計段階で決まる
オペレーショナルカーボン使用(光熱水関連)断熱、高効率設備、再生可能エネルギー

エンボディドカーボンは、資材や工事に「埋め込まれた」排出という意味です。その一部で、竣工までに出てしまう分をアップフロントカーボンと呼びます。

オペレーショナルカーボンは、建物を運用するときのエネルギー消費による排出です。省エネ計算で扱ってきたのは、主にこの部分です。

省エネが進むほど、オペレーショナルカーボンは小さくなります。そのぶん、建物全体に占めるエンボディドカーボンの割合が大きくなるため、資材と工事の排出をどう減らすかが次の論点になっています。

4. 制度で何が求められるか

2026年7月31日に公布された改正建築物省エネ法(改正後の名称は「建築物のエネルギー消費性能の向上及び脱炭素化の促進に関する法律」)で、ライフサイクルカーボンの評価制度が設けられました。

項目内容
評価の実施建築主は、ライフサイクルカーボンの評価に努める(努力義務)
届出政令で定める用途・規模の建築物は、建築主が着工の14日前までに評価結果を国に届け出る(義務)。国の資料では5,000㎡以上の事務所の新築・増改築が示されている
建築士の役割設計を委託された建築士は、評価に必要な事項を建築主に説明するなど、必要な協力を行う
算定のルール国が「建築物ライフサイクルカーボン評価の指針」として統一の算定ルールを定める
認証・表示評価結果と省エネ性能について、登録機関による第三者認証を受け、標章を表示できる
施行評価制度・届出・第三者認証は、公布から2年以内に施行(国は2028年度の制度開始を目指している)

届出の義務がかかるのは大規模な建物に限られますが、建築士の説明・協力は、より広い範囲の建物が対象になる見込みです。中小の設計事務所にとっても、建築主から「この建物のLCCO₂は?」と聞かれる場面は増えていきます。

5. 算定の進め方

算定ツール

国内では、J-CAT(建築物ホールライフカーボン算定ツール) が標準的なツールとして使われています。2024年5月に試行版、10月に正式版が公開され、住宅・建築SDGs推進センター(IBECs)のサイトから無料でダウンロードできます。

J-CATには、目的に応じて簡易算定法・標準算定法・詳細算定法の3つの算定法があります。建築GX・DX推進事業の補助を受ける場合は、標準算定法か詳細算定法を使う必要があります(詳細算定法が推奨されています)。

算定のタイミング

算定する時点は、主に次の3つです。

  • 基本設計完了時:仕様が固まりきっていない段階。削減の検討に生かしやすい
  • 実施設計完了時(着工時):数量が確定し、届出にも使える段階
  • 竣工時:実際に使った資材で算定でき、最も精度が高い

必要になる資料

算定の手間の大半は、資材の数量を集めて整理することにあります。

  • 図面(意匠・構造・設備)
  • 見積書・内訳明細書(資材の種類と数量)
  • 設備機器のリスト
  • 省エネ計算の結果(使用段階の光熱水関連に使う)

見積書の科目や品目を、算定ツールの資材区分に対応づける作業が、最も時間のかかる部分です。

6. まとめ

  • LCCO₂は、建物の一生(資材製造・施工・使用・解体)を通じたCO₂等の排出量
  • 省エネ計算で扱う「使うときの排出」に加えて、資材と工事の排出(エンボディドカーボン)を算定するのが特徴
  • 改正建築物省エネ法により、2028年度にかけて届出・説明・認証の制度が始まる
  • 算定はJ-CATが標準。手間の中心は、見積書などから資材の数量を整理する作業

算定の費用は、国の補助金でまかなえる場合があります。詳しくは「建築GX・DX推進事業「LCCO₂評価実施型」の使い方」をご覧ください。


この記事は、国土交通省の公表資料(2026年10月時点)にもとづいています。届出の対象となる用途・規模、算定の指針などは、今後の政令・告示で確定します。

よくある質問

LCCO₂とLCAは同じものですか?
同じではありません。LCA(ライフサイクルアセスメント)は、製品や建物の一生を通じた環境への影響を評価する手法の総称で、CO₂以外の環境負荷も扱います。LCCO₂は、そのうちCO₂等の排出量に絞って算定したものです。建築の制度や補助金で求められているのは、主にLCCO₂の算定です。
LCCO₂とホールライフカーボンは違うものですか?
指している範囲はほぼ同じです。どちらも建物の資材製造から解体までの排出量の合計を指し、国の資料では「ライフサイクルカーボン(LCCO₂)」、国の算定ツールJ-CATでは「ホールライフカーボン(WLC)」という言葉が使われています。
省エネ計算をしていれば、LCCO₂の算定は不要ですか?
不要にはなりません。省エネ計算が扱うのは、使用段階のエネルギー消費(オペレーショナルカーボンに相当する部分)です。LCCO₂では、これに加えて、資材の製造、施工、修繕・更新、解体の排出量も算定します。
すべての建物でLCCO₂の届出が必要になりますか?
いいえ。改正建築物省エネ法で届出が義務となるのは、政令で定める用途・規模の建築物です。国の資料では、5,000㎡以上の事務所の新築・増改築が対象として示されています。一方で、建築士による建築主への説明などは、より広い範囲の建築物が対象になります。

出典

  1. 建築物のライフサイクルカーボンの削減に向けた制度のあり方 中間とりまとめ(令和8年1月28日、国土交通省)
  2. 改正建築物省エネ法の概要(国土交通省)
  3. 建築物省エネ法の一部を改正する法律案の閣議決定について(令和8年3月27日、国土交通省)
  4. 建築物のライフサイクルカーボン評価に関する制度の検討(国土交通省)
  5. 建築物のライフサイクルカーボン算定ツール正式版を公開しました(令和6年10月31日、国土交通省)
  6. J-CAT(建築物WLC算定ツール)紹介資料(住宅・建築SDGs推進センター)
  • LCCO₂
  • ライフサイクルカーボン
  • エンボディドカーボン
  • 建築物省エネ法
  • J-CAT

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