建築GX・DX推進事業「LCCO₂評価実施型」の使い方:要件・補助額・スケジュールを実務目線で整理

建築物のライフサイクルカーボン(LCCO₂)を算定する費用を、国が補助する制度があります。国土交通省の「建築GX・DX推進事業」のうち、LCCO₂評価実施型です。
この記事では、令和8年度の募集要領をもとに、実務で押さえるべき点を整理します。
要点
- BIMなしでも使える:LCCO₂の算定だけを行うプロジェクトが対象。建物の用途・規模は問わず、改修も含む
- 上限650万円/PJの定額補助:補助率をかけずに、実際にかかった人件費(委託費の人件費相当分を含む)を上限まで補助する
- 入金は翌年度の春:令和8年度は、交付申請が7月1日〜9月末、補助金の交付は令和9年4月頃の予定
1. どんな事業か
建築GX・DX推進事業は、建築物のLCCO₂削減(GX)と、建築BIMの普及による生産性の向上(DX)を一体で後押しするための補助事業です。令和8年度の当初予算は73億円です。
事業には2つの型があります。
| 型 | 補助の対象 | 補助率 |
|---|---|---|
| BIM活用型 | 複数の事業者が連携してBIMを活用する場合の設計費・建設工事費 | 1/2 |
| LCCO₂評価実施型 | 建築物のLCCO₂評価にかかる費用 | 定額(上限あり) |
この記事で扱うのは、後者のLCCO₂評価実施型です。
国がこの費用を負担する理由は、算定結果を集めることにあります。補助を受けた事業者はLCCO₂評価の結果を国土交通省に報告し、国は個別の建物が特定されないよう統計処理したうえで、公表や制度の検討に使います。2028年度の開始が予定されている建築物のライフサイクルカーボン評価の制度に向けて、国内のデータを集める仕組みと言えます。
2. 対象となるプロジェクトの要件
| 項目 | 要件 |
|---|---|
| 申請できる人 | 発注者、または設計・施工を行う事業者 |
| 建物 | 用途・規模を問わない。改修も対象 |
| 工事 | 事業者登録以降に、建設工事(新築、増改築、修繕など)の全部または一部を行うこと |
| 算定ツール | 資材製造、施工、使用(資材関連)、使用(光熱水関連)、解体の5段階に分けて算定できるもの。J-CATの場合は標準算定法または詳細算定法(詳細算定法を推奨) |
| 算定の時点 | 基本設計完了時、実施設計完了時(着工時)、竣工時のいずれか(竣工時を推奨) |
| 報告と協力 | 算定結果を国土交通省等に報告し、国の調査に協力すること |
| 立地 | 土砂災害特別警戒区域などに立地する住宅は、原則として対象外 |
つまずきやすいのは「工事」の要件です。 竣工済みで、今後工事の予定がない建物を算定するだけでは対象になりません。事業者登録のあとに工事が残っているかを、最初に確認してください。
増改築や修繕の場合は、既存部分を含めた建物全体を算定するか、工事部分だけを算定するかを明示します。どちらも対象ですが、建物全体の算定が優先されます。
3. 補助の額
| 区分 | 上限額 |
|---|---|
| LCCO₂評価(BIMなし) | 650万円/PJ |
| LCCO₂評価(BIM活用とあわせて行う場合) | 500万円/PJ |
| CO₂原単位の策定加算 | 1原単位あたり400万円。1事業者あたり1,000万円まで |
「定額補助」という言葉から、650万円がそのまま受け取れると誤解されがちです。実際は、かかった費用を補助率なしで全額補助し、その上限が650万円という意味です。対象経費が300万円なら、補助額も300万円です。
募集要領には、1事業者あたりのプロジェクト数の上限は定められていません(上限があるのはCO₂原単位の策定加算のみ)。複数の物件を持つ設計事務所や建設会社は、物件ごとに申請できます。
4. 対象となる経費
LCCO₂評価実施型で対象になるのは、LCCO₂評価にかかる人件費です。
- 社内で算定する場合:担当者の給与総額に、そのプロジェクトに従事した時間の割合をかけた額
- 外部に委託する場合:委託費のうち人件費に相当する部分。人工や作業時間を示した内訳の提出が必要
あわせてCO₂原単位(EPD・CFPなど)を策定する場合は、その人件費、データベースの利用料、第三者検証費用、公開費用なども対象になります。
実績報告で求められるのは、給与の支払総額や従事割合を記した書類、委託契約の書類などです。給与の支払帳簿、出勤簿、算定にかかった活動の記録は、10年間保存する必要があります。作業時間の記録は、算定を始める前から残す仕組みにしておくのが安全です。
5. スケジュール(令和8年度)
| 手続き | 時期 |
|---|---|
| 事業者登録 | 令和8年4月7日〜12月31日 |
| 交付申請 | 令和8年7月1日〜9月末 |
| 交付決定 | 交付申請の審査後 |
| 完了実績報告 | 令和8年夏頃〜令和9年2月頃 |
| 補助金の交付 | 令和9年4月頃 |
押さえておきたい点が3つあります。
- 補助の対象は、事業者登録の申請日以降の費用:登録前に始めた作業は対象外です。まず登録を済ませてから着手します
- 予算に達すると受付が打ち切られる:交付申請の総額が予算額に達した時点で締め切られます。締切後も申請順に仮受付はされますが、予算が確保された場合に限って本受付となります
- 費用の支払いが先、補助金の入金はあと:算定の費用は年度内に支払い、補助金を受け取るのは翌年度の春です。資金繰りを事前に組んでおく必要があります
6. 申請前に確認すること
- 事業者登録のあとに、建設工事(新築・増改築・修繕)の全部または一部が残っているか
- 算定する時点(基本設計完了時・実施設計完了時・竣工時)を決めたか
- 算定に使うツールと算定法(J-CATなら標準算定法か詳細算定法か)を決めたか
- 改修の場合、建物全体を算定するか、工事部分だけを算定するかを決めたか
- 立地が、土砂災害特別警戒区域などの対象外の区域にあたらないか(住宅の場合)
- 算定に必要な資料(図面、数量、見積書の内訳など)をそろえられるか
- 担当者の作業時間を記録する方法を決めたか(委託の場合は、委託先に内訳を出してもらえるか)
- 施主(発注者)に、算定結果を国へ報告することの了解を得ているか
- 補助金の入金(翌年度の春)までの資金繰りを確認したか
- 経理の管理責任者を選び、事業完了後に経理の監査を行う体制があるか
7. 令和9年度に向けて
令和9年度の予算概算要求では、建築GX・DX推進事業は103億円が要求されています(令和8年度当初予算は73億円)。施工の合理化に役立つ機器の導入支援を強化するなど、事業の拡充・延長が示されています。
予算額は12月の政府予算案で固まり、募集要領の案はこれまで1〜3月頃に公表されています。新しい募集要領が出たら、この記事も更新します。
この記事は、令和8年度の募集要領(国土交通省)にもとづいています。要件や日程は年度ごとに変わる可能性があるため、申請の前に必ず最新の募集要領と、建築GX・DX推進事業実施支援室の交付申請等マニュアルを確認してください。
