LCCO₂の計算方法:算定の5つの手順と、J-CATの3つの算定法の使い分け

建築物のLCCO₂(ライフサイクルカーボン)は、資材の数量に、資材ごとのCO₂原単位をかけて積み上げるのが基本です。考え方はシンプルですが、実際には「数量をどこから、どう拾うか」で手間が大きく変わります。
この記事では、算定の手順と、国の算定ツールJ-CATの3つの算定法の使い分けを整理します。
要点
- 計算の基本は「数量×原単位」:資材ごとの排出量を出し、5つの段階ごとに合計する
- 手間の中心は数量の整理:図面や内訳明細書の科目・品目を、ツールの資材区分に対応づける作業に最も時間がかかる
- J-CATは目的で算定法を選ぶ:設計初期の概算は簡易、設計〜竣工は標準、竣工時の精算は詳細。補助金を使うなら標準か詳細
1. 計算の基本
LCCO₂の計算は、次の式の積み上げです。
資材ごとの排出量 = 資材の数量 × CO₂原単位
- 数量:コンクリートの㎥、鉄筋のトン、ガラスの㎡など、資材ごとの使用量
- CO₂原単位:資材1単位あたりのCO₂等の排出量(kg-CO₂e/トンなど)
これを資材製造、施工、使用(資材関連)、使用(光熱水関連)、解体の5つの段階ごとに計算し、合計したものが建物のLCCO₂です。
使用(光熱水関連)は資材ではなく、建物が使うエネルギーの量に、電気やガスの排出係数をかけて計算します。省エネ計算の結果が使えます。
2. 算定の5つの手順
手順1:範囲と時点を決める
最初に、何を、いつの時点で算定するかを決めます。
- 算定の時点:基本設計完了時、実施設計完了時(着工時)、竣工時のいずれか。補助金の要件でもこの3つが示されており、竣工時が推奨されています
- 算定の範囲:新築か、増改築・修繕か。改修の場合は、既存部分を含めた建物全体か、工事部分だけかを決めます
- 評価期間:建物を何年使う前提で計算するか。使用段階の修繕・更新とエネルギー消費の量が、この年数で変わります
手順2:資料を集める
| 資料 | 主に使う段階 | ポイント |
|---|---|---|
| 図面(意匠・構造・設備) | 全体 | 構造種別、部位の構成、仕上げを確認する |
| 内訳明細書・見積書 | 資材製造・施工・解体 | 資材の種類と数量の主な出どころ |
| 設備機器リスト | 資材製造・使用 | 機器の種類・台数・容量 |
| 省エネ計算の結果 | 使用(光熱水関連) | 年間の一次エネルギー消費量など |
| 工事の記録(竣工時) | 施工 | 実際に使った資材、輸送距離、建設機械の燃料など |
時点が早いほど資料は粗く、遅いほど詳しくなります。基本設計の段階では、概算の数量で算定することになります。
手順3:数量を整理し、資材区分に対応づける
ここが算定の手間の中心です。
内訳明細書の科目・品目は、工事の発注や精算のために書かれています。一方、算定ツールは資材の種類ごとに原単位を持っています。この2つの「分け方」が違うため、明細書の一行一行を、ツールの資材区分に対応づける作業が必要になります。
つまずきやすいのは、次のような項目です。
- 複合的な品目:「〇〇工事 一式」のように、複数の資材が一行にまとまっているもの
- 単位の違い:明細書は㎡、原単位はトン、のように単位がそろわないもの
- 設備工事:機器・配管・ダクトなどの品目が多く、数量の拾い方が工事ごとに違う
- 仕上げ材:種類が多く、少量の資材が積み重なる
手順4:原単位をあてる
原単位には、大きく2種類あります。
| 種類 | 中身 | 使いどころ |
|---|---|---|
| 標準の原単位 | 産業連関表などにもとづく、資材の平均的な値。J-CATは日本建築学会のAIJ-LCA原単位データベースを基本としている | すべての資材の土台 |
| 製品ごとのデータ(EPD・CFP) | 特定のメーカー・製品の実際の値 | 使う製品が決まっていて、データがある資材 |
基本は標準の原単位で全体を算定し、EPDなどがある資材だけを製品の値に置き換える形で、精度を上げていきます。低炭素な製品を選んだ効果は、製品の値に置き換えて初めて結果に表れます。
国は、主要な建材について2027年度までに業界の代表データや個社のデータを整備し、デフォルト値を定める方針です。
手順5:段階ごとに集計して確認する
合計値が出たら、それで終わりにせず、次の点を確認します。
- 段階ごとの内訳:資材製造、施工、使用、解体のどこが大きいか
- 部位ごとの内訳:躯体、仕上げ、設備のどこに排出が集まっているか
- 延床面積あたりの値:他の建物と比べられる形にして、極端な値になっていないか
部位別に見ると、どこを変えれば排出が減るかが見えてきます。算定結果は、削減の検討に使ってこそ意味があります。
3. J-CATの3つの算定法
国内の標準的な算定ツールであるJ-CAT(建築物ホールライフカーボン算定ツール)には、目的に応じた3つの算定法があります。
| 算定法 | 想定する場面 | 特徴 |
|---|---|---|
| 簡易算定法 | 設計初期の概算 | 少ない入力で、おおまかな値をつかむ |
| 標準算定法 | 設計から竣工までの標準的な利用 | 簡易算定法の入力に加え、EPDなど製品のデータを組み込める |
| 詳細算定法 | 竣工時の精算など | 日本建築学会の建築物のLCAツールを活用し、仕訳表・集計表で詳しく積み上げる |
補助金(建築GX・DX推進事業)を使う場合は、標準算定法か詳細算定法を使う必要があります。募集要領では、詳細算定法が推奨されています。
使い分けの目安は次のとおりです。
- 設計の早い段階で、構造形式や主要資材の案を比べたい → 簡易算定法で複数案を比較
- 補助金を使って、設計段階で算定したい → 標準算定法
- 竣工時に、実際の数量で精度の高い算定をしたい → 詳細算定法
4. まとめ
- LCCO₂は「資材の数量×CO₂原単位」を5つの段階ごとに積み上げて計算する
- 算定は、範囲と時点を決める→資料を集める→数量を整理して対応づける→原単位をあてる→集計して確認する、の5つの手順
- 手間の中心は、内訳明細書などの数量をツールの資材区分に対応づける作業
- J-CATは目的で算定法を選ぶ。補助金を使うなら標準か詳細
算定の費用は、国の補助でまかなえる場合があります。「建築GX・DX推進事業「LCCO₂評価実施型」の使い方」もあわせてご覧ください。
この記事は、国土交通省および住宅・建築SDGs推進センターの公表資料(2026年10月時点)にもとづいています。算定の方法は、今後国が定める評価の指針で変わる可能性があります。